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吾輩は猫である。

魔法の指輪

今は昔、吾輩が函館を拠点にしていた頃の話。

吾輩は宝石の輸入のために、中東サウジアラビアへ赴いていた。

サウジアラビアは熱く、平均気温40℃。

昼間は熱くて、街は人がまばら。

商店街の道の間隔は日差しを避けるために狭い。

商業施設は屋根付きのアーケード街か大型ショッピングモールが一般的である。

日が暮れ始めると、街は急に賑わい始める。

吾輩は、少し日が落ちたころを見計らってスーク(市場)へと向かった。

まだ、人がまばら内に吾輩は目的の店へと向かった。

店の入店方法は特殊である。

スークの北側にあるペルシャ絨毯店に入る。

そして、直ぐに店を出て、右手側三軒先の香辛料店に入る。

同じく店を出て、左手五軒対面の雑貨屋に入る。

最後に、最初のペルシャ絨毯の店に入る。

すると最初は無かったペルシャ絨毯店の奥に入口が出現するのだ。

吾輩は既定の手順に従って、宝石屋へ入店した。

ここの宝石は、そこらの宝石とは違う。

この店の宝石には魔力を込めることが出来る。

日本の妖怪化け猫などが愛用する宝石。

有名な猫又も南蛮渡来の宝石を携えてたと聞く。

吾輩は、店の主人と挨拶を早々に済ませ、仕入れの交渉に入った。

吾輩「店主、例の物を30ほど欲しいのだが」

店主「30もかい?店先に出してるのは5つ。ちょっと、見繕ってくる。品質は?」

吾輩「中程度のものを25、上質なのを5で頼む。」

店主は店の奥の方へと向かった。

ふと、左に目をやると、何やら変わった指輪があるではないか。

刻印のところが輝いておる。

吾輩「これは珍妙な。」

吾輩はガラスのショーケースから指輪を取り出して自分の腕にハメてみた。

吾輩「吾輩にピッタリ。」

これは良いものだ。欲しい!

吾輩「おい、店主!このケースに入ってる指輪はいくらだ?」

奥から、店主が戻って来た。

店主「お客さん、何してるんだい!?あちゃ~。駄目だよその指ハメたら」

吾輩「何故だ?何か問題でもあるのか?」

店主「その指輪は魔法の指輪。願えを叶える指輪。」

吾輩「ほう、それは実に素晴らしい。吾輩にピッタリではないか!」

店主「お客さん、勘違いしてるよ。」

吾輩「?」

店主「願いを叶えるのは、お客さん。願うのは、別の人だ。」

吾輩「つまり、それは吾輩が誰かの願いを叶えないといけないということか・・・?」

店主「そして、叶えるまで、それは外れない。」

吾輩「しかし、吾輩は別に外れなくても問題ないが?」

店主「以前、そう言って買った者がいたんだが・・・。」

吾輩「ふむ」

店主「1ヶ月後に、突然体が燃えだして焼死したよ・・・。」

吾輩「え?!」

to be continued

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