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吾輩は猫である。

天上の業火 #001 神託

これは吾輩の前世のお話。

西暦1400年頃、吾輩はジャンヌという少女暮らしていた。

少女は吾輩のことを「バステト」と呼んだ。

彼女が13歳の時、神からの天啓が降りた。

大天使ミカエル、アレクサンドリアのカタリナ、アンティオキアのマルガリタ

この3人が彼女の目の前に姿を現したのだ。

もちろん吾輩にも視えていた。

天啓の内容は、

王太子シャルルをランスへ連れていきフランス王位に就かせよというもであった。

それから間もなく、彼女は吾輩と会話が出来るようになった。

時が過ぎ、彼女が16歳の時。

彼女は神託に従い、故郷を旅立った。

目的地はヴォクルール。

半日をかけて吾輩とジャンヌはヴォクルールへ向かった。

吾輩「ジャンヌ、あの町がヴォークルールではないか?」

ジャンヌ「たぶんね・・・。バステト、街に着いたらあまり話しかけないでくれよ。」

吾輩「何故だ?」

ジャンヌ「変な奴って思われるだろ?」

吾輩「吾輩の声はお主にしか聞こえんぞ。」

ジャンヌ「え?そうなの?」

彼女はずっと吾輩の声が万人に聞こえると思っていたらしい。

吾輩こう見えて何度も転生している故、聡明な猫なのである。

そのような問答をしている間に、吾輩たちは目的地に到着した。

吾輩達は、酒場で得た情報を基にローベル・ド・ボードリクール伯の元へと向かった。

ジャンヌは、ローベル・ド・ボードリクール伯にシノンの仮王宮を訪れる許可を願い出たのだ。

ジャンヌ「私はフランスを救わなければいけないのです。王太子に会わせてください。」

守備隊長「はぁ?何を言っている。気でも狂ったか?」

ジャンヌ「神の導きが私にはあります。王太子に会わせてください。どうか、会わせてください。」

守備隊長「黙れ!」

守備隊長に肉薄するジャンヌに対し彼はジャンヌの顔に平手打ちを浴びせた。

ジャンヌはバランスを崩して地面へと倒れ込む。

吾輩「ジャンヌ。ここは一旦引こう。吾輩に妙案がある。」

ジャンヌ「・・・。」

吾輩とジャンヌはその場を後にした。

ジャンヌ「バステト、妙案とは?」

吾輩「大衆に向けて演説をするのだ。」

吾輩はジャンヌに大衆心理を説いた。

現状、ジャンヌには知名度というものが無い。

人は誰も知らん者に対しては、薄情なものだ。

ならば、ジャンヌが名声を上げてしまえばよいのだ。

ジャンヌが神託を大衆に演説すれば、彼女は崇拝の対象にもなりうる。

ジャンヌの支援者が増えれば増えるほど、守備隊長もジャンヌを看過できぬようになる。

そのような、ジャンヌに手でも挙げてみろ。

大衆が暴徒に豹変してしまうだろう。

吾輩の話を聞き終えたジャンヌは、街の中心部へと向かうのであった。

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